英語講師が感じた “この型…なんかしっくりこない” 問題と、その乗り越え方
― 型は便利。でも「言葉っぽくない」って感じる自分を信じたくなる瞬間がある ―
1. はじめに:奇妙な違和感との出会い
「I have two reasons. First,…」
日本の英語教材で何度も目にしてきたこのテンプレに、私はどうしてもなじめなかった。
アメリカで約9年、文系の学術文化の中で「自然な英語」と格闘してきた私にとって、こうした表現はどこか人工的で、言葉の流れを断ち切るようにすら感じられた。
もちろん、これは誤りではない。型には型の意味があるし、教育現場では“伝わる構文”として定着している。
それでも、「これって本当に伝わっているんだろうか」という問いが、静かに残ったように思います。
2. なぜこのテンプレに違和感を覚えたのか?
私が感じていたのは、構文そのものの不自然さだけではありませんでした。
あまりに多くの教材や模範解答がこの型を踏襲していて、
英語表現の選び方が一方向に流れてしまっているようにも感じました。
英語はもっと、語り手の声や思考の複雑さを包み込める言葉のはずです。
それなのに、「正しい形」に乗ることで、複雑な思考が整理されすぎてしまう違和感があったのだと思います。
3. それでも型が「正解」とされる現実
この構文は、いまも教材や模範解答の定番として扱われています。
教える側にとっても、学ぶ側にとっても、たしかに便利な構造なのだと思います。
説明がしやすく、評価もしやすい。
「とりあえず正しい形」を使えば、最低限の説得力が備わる。
でもその便利さが、書き手自身の言葉への違和感や、自分らしい表現の芽を摘んでしまうこともあるように感じています。
4. 違和感を越えて:自然さと構造を両立する工夫
そんなときに、ある表現が目に留まりました。
There are a few reasons why I feel this way.
“感情→理由”の順序が、語りとしてとても自然に感じられたのです。
文法的にもやさしく、音読してもしっくりくる。
論理ではなく、思考や感情の流れに寄り添っている気がしました。
たとえば、後に
- One reason is that…
- One thing that makes me think this is…
といった形で続ければ、無理なく理由を展開できます。
構文に縛られることなく、自分の考え方の“すじ道”を言葉にできるようになる。そんな手応えがありました。
TOEFLのライティングや、留学先での議論でも、構文以上に「なぜそう考えたか」の流れが問われることがあります。
この表現は、そうした場面でも自然に使っていけそうだと感じています。
5. 型を超える言語感覚の育て方
型は、英語を整える道具です。
けれど、「しっくりこない」と感じたら、その感覚は置いてきぼりにしない方がいいのかもしれません。
英語には、構文だけでは見えない“語り手の空気”が宿っているように思います。
その空気に気づいたとき、言葉の形も少しずつ変わっていく。
そうした気づきを大切にしながら、
自分らしい英語を静かに育てていけるようになるとしたら――それは、それだけで十分、豊かな歩みなのかもしれませんね。